事業主も労働者も『退職のルール』を再確認しよう
退職の意思を『自身』ではなく、『退職代行サービス業者』を通じて伝えるという行為について、連日のように、様々な意見をメディアで見聞きします。
各々の価値観の話はまず一旦置いておくとして、退職代行の利用自体は法的な問題はありませんので、利用者を否定することはお門違いです。
退職の手続き自体は、第三者を介したほうが、確実にスムーズに進みます。
就業規則などで退職の申し出期間を定めている事業所もあると思いますが、優先されるのは民法や労働基準法です。
期間の定めのない雇用の場合(民法第627条第1項)
引用元;日本労働組合総連合会
労働者には「退職の自由」がある。そのため、退職を希望する労働者は自由に退職することができ、退職の意思表示から2週間が経過すると雇用関係が終了(=退職)する。
なんなら
明示された労働条件と異なった場合(労基法第15条)
引用元;日本労働組合総連合会
労働契約の締結の際に示された労働条件が事実と異なる場合には、労働者は労働契約を即時解除できる。就業のために転居した労働者が、解除の日から14日以内に帰郷する場合、帰郷のための旅費を使用者は負担しなければならない。
ということで、状況によっては帰郷の際の旅費まで出るらしいです!
ただこういった条件や有休消化についての交渉は、弁護士さんでないとできないということで、弁護士さんが対応してくれる少々割高の退職代行に依頼をするか、ご自身で申し出る必要があります。
よって即日退職を希望される場合でも、下記のような やむを得ない理由がある場合や、会社の同意を得られなければ、認められないということになります。
・肉体的・精神的な病気により、継続的に働くことが難しい
引用元:ベンナビ労働問題
・要介護の親や病気の子どものケアに専念したい
・職場の上司や同僚からセクハラ・パワハラを受けている
・法令に違反する業務を命じられた
・未払いの賃金や残業代がある
『退職代行の利用』何が悪い?
ガーシー氏がX(旧Twitter)にて
職場退職代行を使って辞めたなら、それも履歴書に書かんと次雇う会社にとっても大事な情報ちゃう?
引用元:日刊スポーツ
とおっしゃっていましたが、それならば会社側も求人票に、離職率と退職代行を利用された件数を記載するべきだと思います。
はじめから「明日辞めてやる!」と思って、入社している人は いないはずです。
会社側も人材確保に当たって、実情とかけ離れたキャンペーンをしていませんか?
大きなギャップがあるために、それが不満となって即日退職に繋がっている可能性も考えられます。
こんな記事も見つけました。退職代行を使うデメリットとして、
「就職活動のときに退職代行サービスを利用したことが知られてしまう」というケースがあること。つまり、その後のキャリアに影響を及ぼすかもしれないのです。
引用元:東洋経済オンライン
いやいやいや、その前に個人情報を漏洩した人が罪に問われるべきでは?
これはもはや脅迫です。
「おかしな世の中になった」という人もいますが、『突然仕事を投げ出す人』は太古からいたと思います。
そのまま飛んで白を切るのではなく、お金をわざわざ払ってまで、最低限の手続きを済まそうとしている点は、悪いことではないのでしょうか。
退職を自ら申し出るパターンでも、様々な事情により、急な退職となってしまうケースはあります。
転居などの致し方がない理由や、キャリアアップなどの前向きな理由がある場合には、円満退職もしやすいですが、大概は労働環境や条件など会社に不満があったり、人間関係がうまくいかず退職を決断することが多いと思います。
病気や介護、出産や育児などの理由に関しては、会社のサポートが充実していれば、休職で済むことでしょうから。
離職者の建前の退職理由のみを鵜呑みにしていると、職場の労働環境はいつまでも改善されず、人材不足のループから抜け出せなくなります。
とにかく、退職代行を利用した人は、『頑張る価値を見い出せない職場』というジャッジをしたということでしょう。
こうなってしまったら『一瞬たりとも自分の時間と労力を、その職場のために使いたくない』となります。
そして現場の指導に当たる方にも自身の仕事があるでしょうし、勤務態度の望ましくない人や意欲が見えない人のフォローをし続けていくことは、想像以上に苦痛です。
早めの離職の決断は、双方の時間のロスを減らせますし、何より精神的な負担も軽減されますので、もっと歓迎されて良いことだと思います。
「求人費がかかっているのに、そんなに無責任にやめられても困る」という経営者の方もいらっしゃると思いますが、まず御社が採用時に、その『人間性を見極めることができなかった』こと、『入社後のサポートの体制が整っていなかった』こと、『勤続していきたいと思わせる魅力がなかった』ことについて軌道修正を図る良い機会となります。
現在その職場で雇用されている方々も、整った体制の中で正当な評価がなされれば、満足度が上がり更なる離職を抑えることにも繋がるでしょう。
まとめ
双方の価値観を押し付けあっていても、退職代行の利用者は増加するばかりです。
利用者も『退職のルール』を理解することが必要です。
転職先が自身の理想に近い職場だという保証はありませんし、今後も同じようなケースに出くわすこともあるかもしれません。
少しでも同僚だった方の負担にならないように、普段から仕事の情報の共有はしておきましょう。
また企業は従業員自らが退職を伝えられるような、さらに言うと決断の前に相談してもらえるような、風通しの良い環境を整えることを目指し、対策を考えていくことが必要だと考えます。

色々な価値観の人がいるから面白い!
ルールは大切!だけど、目指せ!寛容な世界